こんにちは!!
アルゼンチンタンゴダンサーのアクセルです★
本当に久しぶりにブログを更新しますが、サボっていた訳ではありません。
あまりにこの記事について悩みすぎて書いては止め、書いては止めの繰り返しだったのでこんなに間隔が開いてしまいました。
それでは「あなたを伸ばす3つの疑問」の最終章です。かなり長いので、覚悟して読んでください!!笑
【自分に疑問を持つ】
「学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるか思い知らされる。
自分の無知に気づけば気づくほど、
より一層学びたくなる。」
–アルベルト アインシュタイン –
・脳と身体の誤差
ダンスに限らず、身体を動かす事は何でも、やっていると思っている事と実際にやっている事に差があります。
この差を埋める事が上達への近道と言っても過言ではありません。
アスリートで芸能人の武井壮さんがよく話している事ですね。
思ったように身体を動かす能力の事で、しばしばボディコントロールなどと言われます。
スペイン語ではConciencia Corporal(身体的認知)と表現しますが、僕は日本語では運動神経が1番しっくりきます。
身体能力とは意味が違うので、混同しないようにしてください。
コーチに見てもらってもいいですし、自分の動きやフォームを動画で撮るのもいいですね。
「習った事をちゃんとやっている筈なのに、何故か上手くいかないぞー?」とイライラしても無駄です。ちゃんとやってないのです。
・自分の解釈が真理では無い
前回の記事と内容が被りますが、本や動画や先生の指導を通して得た知識には、自分の解釈が伴います。
努力家で勉強家な人にこそ、自分が学んだ事はあくまで自分なりに消化したものであって、それが絶対の真理では無く、あくまでそういう方法があるよねーという認識にとどめておくべきだと思います。
頭でっかちではせっかくの新たな成長の機会を失いかねません。
・最恐最悪の敵「傲慢」
このブログを読んでくれている人は、ダンスを踊られる方々が多いと思います。
質問ですが、皆さんご自分のダンスのレベルをどう思いますか?
「まあもう15年も踊ってるし、アマチュアの中ではイケてる方かなぁ」
「初めてまだ1年半なので、まだまだ初心者です、、、」
「偉い先生に習っているので、少なくとも間違った踊り方はしてませんよ」
「ステップ(シークエンス)をたくさん覚えたから、そろそろ中級者かな?」
例えば上記のような基準で考えているなら、今すぐ改める事をオススメします。
何年踊っているか。
誰に習った。
知っているステップの数。
これらはダンスレベルの基準にはなりません。
ダンスはいつでもその質を見なければなりません。
「そんな事あたりまえ!!」
と思った方も多いと思いますが、意外とこういう考えを持ってしまっている人がいるんですよ。
そう、、、身近にいます、、、
と言うより、いました、、、
それは、、、
僕です!!笑
そう、今はピーチクパーチク先生風ふかせているアクセルも、昔はただの勘違いダンサーでした。(え?今も?)
実はこの話を公開するのかとても悩んだのですが、僕の実際の体験から伝えられる事もあると思い、語らせて頂きます。
少々長くなりますが僕の懺悔の時間にお付き合いくださいまし。。。
初めてのブエノスアイレス留学
遡る事2015年夏、僕は当時のパートナーと共にブエノスアイレスにタンゴ留学をしました。
初めての海外で日本から1番遠い国へ、しかも1年という長い期間だったので、不安と期待と入り混じって変に興奮してたのをよく覚えています。
8月に世界大会を控えていましたので、着いて早々にレッスンレッスンの毎日。
「本場のミロンガで鍛えよう!」と夜のブエノスアイレスに繰り出す。
そんな日々の中で見た数多のカップル達を見て思いました。
「みんなめちゃくちゃ上手いぞ!?!?」
「何で俺達は他のカップルみたいにスイスイ何でも簡単そうにできないんだ!?」
本場のダンサー達とのレベルの違いを見せつけられて、悔しくてたまりませんでした。
ここで僕には2つの選択肢がありました。
シンプルな2択。
ダンサー人生を左右する大きな選択です。
そして、不正解を選択してしまいました、、、、
それは、、、
「パートナーのせいにする事」でした。
ハイ!大不正解!まいどあり!
繰り返しても繰り返しても、理想通りの踊りにならない練習時間(がむしゃらな反復練習は無意味!)の中で、彼女を叱りつける事が増えていきました。
練習とは、チームとして互いに意見を出し合い、試行錯誤した末に
「お!何か今の良かったかも!?」
と感じた時に、その再現性を高める為に反復して身体に覚えこませるという建設的なものです。
仲間であるはずのパートナーに向かって「お前は全然なっていない!まるでダメだ!」という言葉を投げかけて傷付けるのは練習とは反対の何かでしょう。
世界大会は当然、予選落ち。
何故こんな事になってしまったのかというと、「自分はもっと上手いはずだ」という勘違いをしていたわけです。
タンゴ経験の浅いパートナーに足を引っ張られなければ、もっと高いレベルで踊れるんだと思っていました。
・僕は当時すでに何年もタンゴ経験があり(年数は関係ない)
・色々なダンスをしていたので身体もけっこう動くし(動ける事とタンゴの実力は関係ない)
・来日するたくさんのトップダンサー達に習いましたし(何を習っていたんだ)
・日本でタンゴ教えてましたし(何を教えていたんだ)
・アジア大会4位なりましたし(言ってて恥ずかしい)
そして何よりも、元々プロダンサーだったとは言え、タンゴ未経験の彼女を一から教えたのが僕だったという経緯から、完全に自分が圧倒的に格上だと、レベルの差が50くらいあると思ってました。
今から思えば、ホントはレベルの差なんか3くらいしか無かったんじゃないかな。
彼女にとっても僕はパートナーでありながら最初の先生でもあったわけで、なかなか口答えし辛かったのは容易に想像できます。
我慢に我慢を重ねた彼女が時々爆発しては大喧嘩していました。
喧嘩の中で彼女が発した言葉をよく覚えています。
「確かに私はまだまだ未熟だし、出来ないことも多い。でもいい所も得意な事もある。悪いところばかり見ないで、どうやったらお互いの良い所を最大限に発揮して素敵な踊りを作れるか考えるべきだと思う」
僕はこの言葉を一蹴しました。
「プロなら全てできるように努力するべきだろ」と言ったっけな、、、、?
しかし、今でも鮮明にこの瞬間を覚えてるのがその証拠ですが、本当は心の奥底でわかってたんですよね。彼女が正しい事を、、、
僕は本当に、何とかして上手くなりたかった。
というより上手くなる以外に他に道はありませんでした。
他のダンスを捨ててタンゴの世界に飛び込みましたし、日本のタンゴ界ではよく知られたダンサーであり、名古屋アルゼンチンタンゴクラブの代表カロリーナの息子である僕は、上手くて当たり前なのです。
練習はたくさんしました。
レッスンも死ぬ程受けました。
毎日の自主練の成果で僕の個人能力はかなり伸びましたが、肝心のパートナーリングは2歩進んで7歩下がる有様でした。
そして
タンゴ留学9ヶ月目で、彼女とパートナーを解消しました。
理由はいくつかありましたが、詳細は控えます。
「今まで足を引っ張ってごめんなさい」と涙ながらに謝られました。
恐らく彼女がこのブログを読むことは無いでしょうが、いつか面と向かって「本当は2人の足を引っ張っていたのは俺の傲慢さだった」と認めて素直に謝りたいと思っています。
格上の新パートナー
恐らく世界中の全てのペアダンス業界がそうだと思いますが、男性ダンサーというのは常に不足しています。
つまり男性はそこそこ上手ければパートナーを見つけられますが、女性はかなり上手くても組めない時は組めません。
日本への帰国日が2ヶ月を切った頃、僕に新しいパートナーができ、一緒に日本にも来てくれる事になりました。
彼女の名はエベ ルシア・エルナンデス。
全身に行き届いた美意識と、呼吸するかのような自然な踊りで魅了する、超が付くほどの実力派ダンサーです。
ハッキリ言って組んだ当初の僕にとって彼女は段違いのレベルでした。
共通の師であるジョナサン・スピテル先生の「アクセルは才能あるから!俺を信じて!」という熱い推薦がなければ組んでは貰えなかったでしょう。
「え、人間ってこんな完璧な身体のコントロールできんの!?アンドロイドかよ!?」と疑いたくなるくらいの動きの精度に加え、1センチの歪みさえ許さないクレイジーな程のダンスへのこだわりぶり。
カルマでしょうか、、、、今回は完全に格下という立場です。
つまり、できない事を相手のせいにする余地はありません。
彼女が9センチヒールを履いて1人でほとんど何でもできるのに、僕と踊った時にできなければリードが悪い以外の何物でもないからです。
しかし自尊心の防衛本能なのか、うかつな言い訳をしようものなら、彼女のスーパーダンスメソッド理論武装砲で集中砲火を浴びます。
練習を繰り返す中で僕のプライドは、セルゲイ・ハリトーノフにノーガードポジションのマウントを取られて、顔の形が変わるまでハンマーパンチを振り下ろされたセーム・シェルトくらいボロボロになりました。
しかし普段のエベは、人の心と愛を重んじた優しい人間です。
熱くなるのは踊りを愛すればこそ!何も僕を打ち負かそうとしている訳では無く、本気で良い踊りを追求しているだけ!
それを理解したアクセルは、遂にひとついい選択をしました。
それは「自分の未熟さを受け入れて、まずはエベの厳しい要求に全て応えられるようになろう!」という決断。
いつか「アクセル、あなたに言うことはもう何も無いわ、、、最高に踊りやすい男になったわね。」という台詞を彼女の口から聞けるまで(結局まだ聞けてません 笑)
この瞬間から劇的に練習の質が変わり、建設的で創造的な時間を共有しました。
まず最初に本当に基礎的な部分からの見直しを求められ、それをクリアすると徐々に要求は高度になりました。
大会に向けた振付を作りながら、毎日基本を確認しました。
そんなある日、エベが「ねぇアクセル、私こういう感じのやりたいんだけど、、、どうやったらできるかな?」と普段やり慣れたタンゴのステップとは違う新しい動きをやって見せました。
つまり「こういうデザイン(外観)にしたいから、リーダーとして土台と骨組みを設計して欲しい」と依頼されたわけです。
僕なりに、彼女のアイデアが実現するように動きの導入や支点、力の方向性を考えて作ってみました。
彼女は「これ好き!最高ヽ(*^ω^*)ノ」と大変気に入ってくれました!
創造性の部分で1目置かれたのでしょうか?それ以降、振付を作る時は僕が中心になってアイデアを出し、彼女が良いと思うものを選択していくパターンが多くなりました。
そうやって6ヶ月かけて作り上げた「Che Buenos Aires」で2016年のアルゼンチンタンゴ世界大会でファイナリスト(7位)という成績を残す事ができました。
大会後、エベをアルゼンチンに残し僕は帰国しましたが、彼女と踊った8ヶ月でリーダーとしてプロダンサーとして大きく成長させて貰いました。
またいつか踊れたらいいな、、、
運命の出会い
帰国する直前に、我が師匠でタンゴソル日本橋代表のエンリケから「アクセルが日本にいる間、一緒に仕事できそうなダンサー見つけたよ」と連絡がありました。
ちょうど僕の大会での好成績を祝うミロンガ(ダンスパーティ)を開催してくれるとのことでしたので、せっかくならそこで踊れば?という。
送られた映像を見て「中々面白いダンサーだなぁ」と思いましたが、実はあまり乗り気ではありませんでした。
この時は「来年も絶対エベと大会に出る」とまだ思っていたからです。
知り合ったのはミロンガ当日の午後。
スタジオに元気よく入ってきたのはいかにも陽気で、グラマラスな身体にヘソピアスをした典型的ラテン美女のアゴスティーナ・タルチニ。
時間も無いので早速練習!
初めてなのでお互いに慎重に相手の様子を伺いながら踊りましたが、1曲終わって思ったのは「全身が踊るダンサーだなぁ」という事。
生粋のタンゲーラ(タンゴ人 )でなく、この人はそういう枠にとらわれないダンサーそのもの。
1時間半だけ練習をして、その夜に4曲即興でパフォーマンスをしました。
特に難しい事もせずシンプルに踊りましたが、居心地よくスイスイと踊れたおかげで今日知り合ったとは思えないクオリティが出せたように思います。
帰宅後にパフォーマンスの動画を見て
「!!??」
今まで見た事がないアクセルが画面にいて驚きました。
「ただ普通に踊ってるだけなのに、なんか俺史上いちばんイケてない、、、?」
「動きが自然だし、何よら背筋がスっと立ってる!」
カップルバランスの良さはもちろんですが、踊るために生まれてきたような彼女の、内面のエネルギーが僕に影響を与えているように見えました。
アゴスティーナは僕と踊る事を大変気に入ってくれたようで(知り合った日の夜に母親に電話して「探してた理想のパートナー見つけた!」と報告していたようです 笑)お互い時間があれば練習するようになりました。
そして知り合った約3週間後のある日、スタジオに現れた彼女から「アクセル、私と来年の世界大会に出ない?」と提案がありました。
急な提案に少し驚きましたが、後から聞いた話では、実は彼女はForever Tangoからスカウトされていて、「アクセルが一緒に大会に出てくれるなら誘いを断って、日本の滞在を伸ばそう」と決めていたようです。
僕は来年も絶対エベと大会に出たいと考えていたのですが、実は当の本人はもう大会は引退すると宣言してましたし、僕はアゴスティーナをかなり気に入っていました。
そこでエベに連絡を取り、大会に参加する意思がない事を改めて確認したところ「アゴスティーナと踊った動画見たけど、彼女はアクセルの良い所を引き出すから、彼女と踊るべきと思うわ」と背中を後押しされました。
そんなこんなで知り合って1ヶ月せずに来年の大会に向けて準備を始めた我々。
「アルゼンチンタンゴ業界は日本に大きな恩があるから、それを表現したい」というアゴスティーナの提案を聞き、「どうやったらそれが伝わるかなー」と考えながら小松亮太さんのアルバムを何となく開き、ランダムに再生してみる。
そして流れた神曲、、、っ!
「なんじゃこのラ・クンパルシータはぁぁぁ!!!カッコよすぎる!!タンゴの国家クンパルじゃん?日本人の演奏じゃん?完璧じゃん!?」
と、アゴスティーナに曲を送信した10分後
「なにこれアクセル!これがいいこれがいいこれがいい!お願いこれにしよ?」
といった形で曲は即決でした 笑
そして善は急げと、すぐに振付を作る作業に取り掛かった我々。
あれこれ意見を出し合って構成が出来上がり、ここの音楽はこういう感じでああでこうで、こんなステップはどうだろうかと、2人ともアイデアが豊富なのでかなり濃密な振付が作り上がっていきました。
その試行錯誤と練習の過程で、お互いの事がもっとわかってきました。
皆さん意外かもしれませんが、アゴスティーナは実は、得意な事と苦手な事の差がとっても大きいダンサーでした。
一能突出型という言葉が適切なのでしょうか、得意な事をさせれば女神のように輝きますが、苦手な事は100回やってもできません。
力技意外は何でもこなす万能型のエベと踊っていた経験から、少し不満を抱えそうになりましたが、この頃のアクセルはもう以前のアホではありませんでした。
「これはチャンスだ」
そう、チャンスだ!
エベという圧倒的実力者に「踊る」ことのほとんどを任せ、彼女がいいパフォーマンスを発揮できるようにサポートに徹した2016年大会。
次はもっと自分を出して勝負できるチャンスが来たわけです。
そして何と運命的な事か、アゴスティーナの得意な事は俺の苦手な事で、俺の得意が彼女の苦手だったのです。
今こそ、2年前にはできなかった「例え完璧でなくとも悪い所ばかり見ないで、どうやったらお互いの良い所を最大限に発揮して素敵な踊りを作れるか考える」時でした。
お互いが相手を尊重し、尊敬し、どのようにサポートし合えるか頭を捻って、もし僕らが審査員だとしたら、どんなパフォーマンスが見たい?と問い続けながら、先生達にアドバイスも頂いて振付を作り上げました。
そして練習に練習を重ね、僕らは2017年世界チャンピオンになり、そしてこれが僕の傲慢への新たな試練になりました。
世界中のタンゴダンサーや愛好家から賞賛の嵐を貰い、時には一緒に写真を撮りたい人々の列ができ、海外でショーやワークショップをすれば現地の方々が手土産を持って挨拶に来て、晩御飯に誘われれば高級ディナーをご馳走になり、タクシーでホテルまで送ってもらえる。
「なるほどこういう生活をしていると、売れてるダンサーの何割かが自分は特別だとか偉いだとか勘違いするんだな。」
という環境を目の当たりにしました。
しかし傲慢は成長を止め、人間関係も悪くしてしまう事を心に留めてこれからも進んで行きたいと思います。
僕の失敗談を読んだこの機会に、ぜひご自身を省みて頂き、謙虚で建設的な姿勢を持って毎日少しづつ進歩していくダンサーを、一緒に目指しましょう!!
本当に長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました!
AXEL ARAKAKI